誕生日を迎えてしまうと、時の流れは足音を大きくする。

短い春休みも明け、潤と静香には新学期が訪れた。


世間は芽吹きの色に染まっている。

植物は春の訪れを告げ、動物は行動を起こす。


昇降口に張り出された何枚もの紙のうち、上方に「2年10組」と書かれた紙に「露木潤」の文字を見つけた。「2」と「10」の数字に、誕生日と同じだと頭の片隅に思った。

なんのための時間なのだろうと考えて式の終わりを待ち、「2-10」の文字を掲げる教室に入った。

教室の中央に近い場所に置かれた自席の椅子を引くと、「あっ」と女の声が聞こえた。

主の顔には見覚えがあり、潤は「ああ」と気の抜けた声を返し、そのまま席に着いた。

「露木君。また同じクラスなんだね」

七瀬は言いながら隣の席に着いた。

「……みたいだな。存分に喜べ」

「それはこっちのセリフ。二月に席が近かったらまた孤独なバレンタインを体験させないであげるんだから」

「はあん、そりゃどうも」

「チョコ、おいしかったでしょ」

「ああ、まあ。妹に一個盗まれたけど」

「へえ、露木君妹いるんだ?」

なんか意外と呟くように言う七瀬へ、なんか複雑と同じように返す。