落ちた水もすぐに蒸発してしまうのではないかと想像するようなアスファルトを蹴りながら、潤は顔を上げた。
「ああ」と言う十織へ「おう」と声を返し、不気味に笑う彼へ「なに」と返す。
「なんか、こういうのいいなって」
「なんだよ、気持ち悪い」
「友達とどこかで約束してて、そこに同時に着くって」
「別になにも特別なことじゃねえだろ」
「そうなの? おれにはすごい特別」
「まあ、お前自身がちょっと特別な感じだもんな」
「褒め言葉?」
「ではないと思う」
「そうか」と笑う十織へ「嫌がれよ」と返す。
散歩という予定通り、公園の中を歩く。
足音と蝉の声、遠くの人の声と、いろいろなものが聞こえる中、潤は自分たちを包む静寂を「あのさ」と払った。
「……昨日お前、いかなる意見も思想も否定しないし肯定もしないって言ったよな」
「うん」
「……それ、なんで?」
「特に意味はないよ。なんとなく、露木君には話してみようかなって思っただけ」
「……そうか」
いやいや、と潤は苦笑した。
「そうじゃなくて。そういう意味じゃなくて。なんで、お前は『いかなる意見も思想も否定しないし肯定もしない』のかって」
「ああ」
そっちか、と十織は笑った。ごめんごめんと同じように続ける。