透明な海



「お待たせ」とグラスを置くと、静香は「どうも」と中身を含んだ。

「最近、よく出掛けるね」

「ああ、まあ」

「珍しいよね、潤が夏休みに毎日出掛けるなんて」

「静香こそ、今年は帰り早くないか?」

「まあね。去年、お母さんにこっぴどく叱られたから」

「ああ、そういえばそんなこともあったな。静香が半泣きになるんだから、現場にはよっぽど緊迫した空気が漂ってたんだろうな」

「半泣きになんかなってないし」

「そうだったか? おれの記憶が正しければ、夜一緒に寝たんだが」

「どんな誤解してんの? 馬鹿じゃないの、そんなにわたしに好かれてたい? 妄想の世界でも?」

「わかったわかった。トップシークレットにはしておくから」

な、と苦笑して、潤は自分の前に置いたグラスを手に持った。

「だから泣いてないし」

「半泣きだもんな」

「まじでぶっ飛ばすよ」

「そんなことしようものなら、また母上様がゆでだこになるぞ」

諦めたように息をつく妹を笑い、潤は蜂蜜レモンを喉に通した。