透明な海



はあと長く息をついてベンチに腰を下ろし、潤は前方へ目をやった。

十織と思しき人が、なにやら先ほどの女性と話していて、何度かぺこぺこと頭を下げる。

最後、十織がこちらを指で示すと、しいが大きく手を振ってきた。潤は躊躇いがちに手を振り返す。


戻ってきた十織は隣に腰を下ろした。

「お人好し」潤は言った。

「しいちゃん、嬉しそうだったよ」

「そうか」

「露木君のこと、あのお兄ちゃんすごいねって言ってた」

「そう」

十織は口角に笑みを浮かべて目を伏せた。

「綺麗だった」

「綺麗?」

「しいちゃんの笑顔。りりいが本当に大切なんだっていうのが伝わってきた」

「……まじで本当に純粋なやつなんだな、お前って」

「そんなことないよ」

「なかなかいないと思うぞ、お前をけがれてるって思うやつ」

十織は小さく笑う。「そうかな」

「少なくともおれはお前を純粋なやつだと思ってる」

少しの沈黙を、十織は「おれさ」と破った。