食材のストックに余裕があり、気まぐれにポトフも作った。

スープカップと“ニョッキ”を盛った皿を手にキッチンを出ると、静香は「おお」と声を発した。

「なんか多い」

「お兄様の気まぐれポトフだ」

「へえ、ポトフってあれだよね、野菜とソーセージ入ってるやつ」

「そう。材料に余裕があったから」

「へええ」

潤の頭もたまにはいいようにも働くんだねと笑う静香に、潤はその余計な言葉を引き付ける磁力はどうにかならねえのかと返し、「しばしお待ち」と残してキッチンへ戻った。

自分用の皿にフォークを差し、皿を持つ指の間に静香のフォークを挟んで、もう一方の手でスープカップを持つ。

ダイニングテーブルに自分用の食器を置き、妹の前にフォークを置いた。

同時に手を合わせ、「いただきます」と唱えてフォークを持つ。

皿の中でソースと絡まる一粒を口に入れると、静香は「おいしい」と素直に言葉を発した。

潤は「当然だ」と言ったうえで、「たまには素直に言えんじゃねえか」と返す。

直後スリッパを履いた固いつま先に脛を蹴られ、微かに声を漏らした。