透明な海



根元の土を払い、抜いた草の山にそれを載せた。

「おお、綺麗になったねえ。つるっつるだ」

「お父さんも満足かな?」

「あれっ。お父さんの命令だって言ったっけ?」

「言ってないけど、まずそうかなって」

「大正解」

さすが十年以上の付き合いだねとななは笑みを見せ、「いやあ疲れた」と伸びをした。

「本当にありがとうね、本当に助かった」

「ううん。難しいことでもないから」

「お人よしだねえ。悪い人に使われないでよ?」

なんてわたしも言えたもんじゃないかと笑うななへ、十織はそんなことないよと返す。

「今日のお礼の品はどうしようかね。……飴ちゃん食べる?」

「気持ちだけで充分だよ。ななの分なくなっちゃうから」

「まあそうなんだけど……」

どうしようかと呟いたあと、ななは「あっ」と声を上げた。

「いいこと思いついた。十織の好きなことしてあげる。買い出しでもなにかの手伝いでも」

「えっ……」

どきりとした。体温が上がるのと一緒に、全身を伝うような鼓動を感じる。

「別ジャンルでもいいよ? つまらない一発ギャグで数日恥ずかしい思いするのも、炭酸の一気飲みでも、バケツの水かぶるのも」

なにがいい、と見上げてくるななへ、十織は「じゃあ」と口を開いた。そうするのに数秒の時間を要した。

ななは「なんでもこい」と、軍手を着けたままの拳で自身の胸元を叩いた。


十織は軍手を外し、彼女との距離を一歩縮めた。

右手に持った軍手を離し、ななを抱きしめる。

「え?」と彼女は低く間の抜けた声を発した。