透明な海



「ところで、なにか手伝えることがあるの?」

「ああ、そうそう。これから暇?」

「予定はないよ」

「本当。じゃあさあ、ちょっと草むしり手伝ってくれない? 今日なんかもう一日中やってんの、わたし。でも減らない減らない」

困ったもんだよ、とななは苦笑する。

「そこそこな頻度で土の中から虫出てくるし」

「いやすいんだろうね。じゃあちょっと待ってね、カメラ置いてくる」

「ああ、ありがとう」

本当に助かると言うななへ「お安い御用だよ」と返して、十織は自宅の敷地に入った。黄金色のように輝く夕焼けの下、彼はぱちぱちと小さく火花を散らし始めた火の玉を感じた。


「はい」と渡された軍手を受け取り、装着する。

「これでも頑張ったんだよ? わたし」

「もう少しじゃん。きっと今日中に終わるよ」

「本当、頼りになる」

「できることならなんだって」

「わたし、度々あの幼稚園に通っててよかったと思うよ」

「なんで?」

「あの幼稚園に通ってなきゃ、十織に会えてないでしょう? 小学校で会えたかもしれないけど、ここまで仲よくなれるかわかんない」

言いながら、ななの手はテンポよく草を抜いた。十織も目についた草を引き抜き、根本の土を落とした。

「……おれも、ななに会えてよかったよ」

「本当? わたしなんかなにもしてないじゃん」

「そんなことない。おれの初めての友達はななだから」

なんなら恋だってそうだと、十織は聞こえない声で続けた。