「先パーイ!」
休日の昼下がり。
街中の交差点。
信号待ちの間、肩にポンと軽い衝撃を受けた。
振り向くと美空の友達で、オレの美術部の後輩にあたる子がいた。
オレと美空が付き合っていたことを暴露した子だった。
「げっ」
「あ!『げっ』って言った!!サイテー!!」
その後輩はケラケラ笑っている。
「いや、ごめん。でもオレ今忙しいから」
やんわり「ひとりになりたい」アピールをしてみる。
「忙しいんですか?そうは見えないけどな」
「失礼な奴だなぁ」
「先パイだって失礼ですよ、『げっ』って、開口1番に乙女に向かって言う言葉ですか?」
「……悪かったって」
オレは青信号になったので、
「じゃあ」
と言って立ち去ろうとした。
「待って!」
それでも後輩はオレの腕をガシッと掴んで離さない。
目の端で青信号が点滅しているのが見えた。



