オレは絵が好きだ。
その気持ちで十分じゃないか。
絵を描くことさえ手放さなければいいんだ。
それでもやっぱり納得なんて出来ない。
「いつか」を考えてしまう。
いつか……、いつかオレの絵で人を惹きつけられるんじゃないかって。
オレの絵を「好き」って思ってもらえるんじゃないかって。
「いい加減、目ぇ覚ませよな」
オレはポスターから視線をはずし、呟いた。
他の誰でもない、オレが1番わかっている。
諦めきれない夢だけれど、叶うはずない夢だって。
「『いつか』なんかねーよ」
オレは駅のホームから見える真っ暗な空を見上げた。
田舎の空。
広くて怖い。
地上にいる自分が小さく感じてつらい。



