ーー忘れられない女の子がいる。



『イラストレーターの美空(みく)、婚約を発表。お相手は有名若手小説家の……』


オレはそこまで読んでスマートフォンを裏返し、机に置いた。
新年がはじまって間もない。
手がやけに冷たく感じた。

龍生(りゅうせい)、美空ちゃん結婚するって……!」
オレの部屋。
高校の美術部で一緒だった友達が驚いた顔をオレに向ける。

「あー、うん」
適当に返事する。
「まぁねー、オレらも27歳だもんな。美空ちゃんは26歳かー。結婚もするよなー」
友達はため息混じりにそう言って、ひと口ビールを飲んだ。

「龍生が美空ちゃんと付き合ってたことも、オレ知らなかったんだよなー。お前ら秘密にするからさー。いつだっけ?教えてくれたのって」
「オレが教えたんじゃなくて、後輩の……、美空の友達が美術部の集まりの時に暴露したの!しかもその集まりってオレの就職祝いだったし」