お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》


「旦那様。新たな仕事が入ったのは良いことですが、あまり無理をなさらないようにして下さいね。」

「ははは。そうだな、肝に銘じておくよ。…ところで、お前の方はどうだ。もう仕事には慣れてきたか?」

「はい。旦那様のお陰で、良い経験をさせていただいています。」

「彼とはどうだ?仲良くやっているか?」

「彼?」


その時、窓の外から楽しげな笑い声が聞こえてきた。ウォーレンと共に視線を向けると、庭で使用人達と談笑しているこげ茶色の短髪の少年が見える。


『ほんと、ダンレッド君はよく働くねえ…!そんなに薪を持って大丈夫かい?』

「楽勝ですよ〜!ほら、右手が空いてるんで、小麦粉の袋だって持てます!」

『たくましいねえ…!そういえば、馬小屋の掃除もしてくれたんだって?』

「はい!あいつら可愛いですね。お世話をしにいくと必ず鼻を鳴らしてくれるんですよ〜!」

『ははっ!随分仲良しだね。馬仲間だと思われてるんじゃない?』

「えぇ〜っ!ひどいな〜!」


ケタケタと笑うダンレッドは、その人懐っこさと愛嬌のある顔立ちでたちまち使用人達の人気者になっていた。屋敷には雑用係として雇われたようだが、嫌な顔一つせず働く少年のことを、屋敷の大人達は気に入って可愛がっているらしい。

使用人達に話しかけるたびに緊張される自分とは随分違う対応だ。