そして、険しい表情で頭を抱えるダンレッドの様子を窺っていたその時。ダンレッドは、ばっ!とルシアの方に手を置いた。
「お嬢さん、落ち着いて聞いて。今、ここでゆったり過ごしてる場合じゃないんだ。」
「ど、どうしたの?」
首を傾げるルシア。
ダンレッドは目を逸らさず、はっきりとその言葉を口にした。
「メルが、お嬢さんの専属執事を辞めさせられるかもしれない。」
「どういうこと…?」
「今夜のパーティーは、ルーゼント家が金で使用人のヘッドハンティングをするために仕掛けた罠なんだ。実際に、毎年補佐に選ばれた執事がパーティーの後仕えていた家を出ているし、今回ルーゼント家の内部では、クラリア嬢の推薦でメルに目が付けられてるらしい。」
ルシアは、言葉を失った。
相手は国内でも有数の大財閥。クロノア家も貿易面ではそれなりの地位を築いてはいるが、執事協会を取り仕切っているルーゼント家には及ばない。
しかし、ルシアの脳裏に過ぎっていたのは、誰を敵に回すかではなく、いつも側にいてくれた専属執事の彼の姿だった。
「止めなきゃ…!メルが他の人の執事になるなんて、嫌!」
ぐいっ!とダンレッドの手を掴んだルシア。ぱっちりとした二重の瞳が、驚くダンレッドを映す。
そして、ダンレッドの耳に届いたのは、清楚なお嬢様らしからぬ凛としたルシアの声だった。
「パーティーに乗り込みましょう!一緒に、メルを取り返すの!」



