お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》


…と。

いそいそとキッチンに向かおうとした、その時だった。

勢いよく玄関の扉が開く音がした。ドタドタと焦ったような足音が部屋に近づいてくる。

そして数秒後。

部屋の扉を開けて現れたのは、私服に身を包んだダンレッドだった。


「お嬢さん!いる?!」

「きゃあっ?!ごめんなさい!チョコレートはふた粒までにするから!」


きょとん、と目を丸くしたダンレッド。

胸に手を当てて縮こまるルシアに、彼は眉を潜めた。


「チョコレートなら、キッチンの棚にあるでしょ?俺が買い足してあげるから、いっぱい食べな?」

「へっ?」

「それより、メルは?まだ屋敷にいる?」


早口でそう尋ねるダンレッドに、状況の掴めないルシアはおずおずと答える。


「メルなら、お昼過ぎにはここを出たわ。今ごろ、パーティーでゲストに挨拶している頃じゃないかしら?」


見開かれる薔薇色の瞳。

前髪をかきあげたダンレッドは、「遅かったか…!」と天を仰いだ。

ルシアは、突然の展開に頭がついていかなかった。しかし、ダンレッドが何やら焦っていることだけは分かる。