お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》


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「パーティー、そろそろ始まる頃かしら。…メル、頑張ってるかな…」


バースデーパーティー当日。

夜の開催時間に合わせて、メルは早いうちからルーゼント家の別荘へと向かっていた。

ルシアは、日がおちてきて暗くなった窓の外をぼんやりと眺める。頭に浮かぶのは、他でもないメルの姿だ。今日で忙しかった日々が終わり、いままで通りの平穏がやってくると思うと、ほっ、とする。

ルシアは、警備隊の手伝いから戻り休憩に来たダンレッドと共に、メルの入れた紅茶を飲むひとときが恋しかった。

さみしい、だなんてメルには口にできなかったが、最近はダンレッドまでも屋敷を空けることが多く気分が上がらない。

そして、そんな中、屋敷の使用人から聞いたのはダンレッドが綺麗な歳上の女性といるのを見た、という驚愕のタレコミ。仲の良い友人の浮ついた話に、つい、嬉しくなって本人に尋ねると、“俺、悪い男になっちゃった”と濁されてしまった。

それも、腑におちない。


(はぁ。今日は、なんとなくやる気が出ないわ。普段はたくさん食べないよう気を付けてるけど、今日はチョコレートをこっそり全部食べちゃおうかしら。)