お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》


リラのネームプレートの縁は、ゴールドの装飾があった。

会場の使用人を眺める中で、ブロンズ、シルバー、ゴールドの色分けがされていることに気づいたダンレッド。それはメイドの階級であり、リラは長年ルーゼント家に雇われているようだった。

おそらく、毎年開催されているバースデーパーティーのことも、ルーゼント家のこともよく知っているだろう。


「えっと…執事さんのお名前は?」

「あぁ、すみません。俺のことは、レッドと呼んでください。」

「レッドさん…?そんな名前、名簿にあったかしら…?」

「ははっ。あだ名のようなものです。気軽にどうぞ。」


今なら、ミカゲが偽名を使い分ける気持ちがよく分かる。こうして暗躍するたびに、執事は本当の名前を無くしていくんだ。

そして、若干の罪悪感を胸に、ダンレッドは、ふっと微笑んだ。


「せっかくですしちょっとお話ししましょう?リラさんのこと、もっと教えてほしいな。」


きっと、こんな軟派な執事が本当にいたのなら、メルに躾直されていたところだろう。

こうして、多少強引だが流れるように口説き倒すダンレッドは、頬を赤らめるメイドと共にルーゼント家の別荘への潜入を成功させたのであった。