お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》


思わずバックに炎が燃え上がるダンレッド。

屋敷でメルの帰りを待っているであろうルシアのことを思うと、今すぐにでも間に割って入って威嚇したいところだ。

しかし、メルがすっ、と距離を取ったことでダンレッドは踏みとどまる。


“気をつけた方がいい。例のバースデーパーティーも、表向きはただの金持ちの社交会だが、裏ではドロドロした陰謀ってもんが渦巻いてる”


ダンレッドの脳裏に、ミカゲの声が響いた。

壁に寄りかかるダンレッドは、遠ざかる二人の背中を横目で見ながら腕を組む。


(このままじゃ情報が弱い。…何か、確証を得られるような言質がとれれば…)


その時。ダンレッドの視界に準備されたいくつものテーブルを拭く一人のメイドが映った。

彼女は沢山の食器を抱え、ゆらゆらと歩きだす。

そして、その光景を見た瞬間。ダンレッドは一歩、足を踏み出した。


「重そうですね。替わりますよ?」

「えっ!」


そっ、と重ねられた皿を支えたダンレッドに、驚いて目を見開く彼女。

流れるようなダンレッドの仕草に、彼女はぎこちなく続ける。


「す、すみません、大丈夫です…!私の仕事ですので…」

「あれ?君、メイドさん?あまりにも可愛らしいので、どこかの令嬢かと思いました。」