お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》



(メル、どこだろ…?トイレかな?)


と、きょろきょろと辺りを見回していた、その時だった。


「メルさん。ホールの準備は順調かしら?」


若い女性の声が耳に届いた。彼女が呼んだ名前を聞き、犬並みに優れた聴力が反応する。

素早く顔を向けると、きらびやかな装飾品を身に纏った女性と燕尾服の青年が見えた。


「壁の装飾や音響機材の搬入も終わりました。ゲストへの招待状も配りましたし、後は当日を待つだけです。」

「さすが、噂通りの仕事ぶりね。予定の半分の時間で準備が終わるなんて。」

「とんでもありません。こちらこそ、いい経験をさせていただいていますよ。」


にこやかに会話する二人。

すると、クラリアはするり、とメルの腕に絡む。きゅっと燕尾服を掴んだ彼女は、メルの顔を覗き込みながら囁いた。


「本当、メルさんが来てくれて良かったわ。誕生日が来たら会えなくなるなんて残念ね。」

(何あれ!浮気じゃん!!)