お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》


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「メル。今日、俺もついて行っていい?」


パーティーを三日後に控えた午後。

会場の下見に出向くメルに、ダンレッドはにこやかに声をかけた。一方のメルは、怪訝そうに眉を寄せる。


「どうして?今まで、そんなこと言い出さなかったのに。」

「いやあ。ちょっと気になることがあってさ。ルーゼント家の人たちもくるんでしょ?」

「そりゃあね。…ダン。何か企んでる?」

「あははっ!何それ〜!んなわけないじゃん!単なる好奇心だよ〜。」


ケタケタと笑うダンレッド。

メルは、少し何かを考えるように黙り込んだが、やがて小さく息を吐いてダンレッドの肩をぽん、と叩いた。


「俺は上手くやってるから、お前はお嬢様の側にいてあげてよ。ダンがいるから、お嬢様を任せて外に出てるんだからね。」


そう言い残してコツコツと屋敷を出て行くメル。

相棒の言葉に感動を覚えながらも、ダンレッドは深く息を吐いた。


(やっぱり、正面突破は難しいか。でも、ここで諦める俺じゃないもんね。)


と、その時。

ダンレッドの瞳に映ったのは、ベランダで風に揺られる燕尾服だった。