「番犬くん。君、会ったことあるか?ルーゼント家のご令嬢。」
「いえ。確か、クラリアさんでしたっけ?名前くらいしか…」
ミカゲは小さく口角を上げ、真剣な表情を浮かべて低く呟く。
「気をつけた方がいい。例のバースデーパーティーも、表向きはただの金持ちの社交会だが、裏ではドロドロした陰謀ってもんが渦巻いてる。」
「陰謀?」
「簡単に言えば引き抜きだな。ゲストをパーティーで泳がせてるようで動きを見られてる。使えるか、使えないか。引き入れるか、切り捨てるか。…もちろん、執事もな。」
コートを羽織ったミカゲは、薄い唇を僅かに緩ませた。目を丸くしたダンレッドは、ただただ、言葉を失ってミカゲを見上げる。
ポケットに手を入れて歩き出すミカゲは、去り際にダンレッドへ声をかけた。
「今のはあくまで噂だよ。俺はいろんな家を渡り歩く野良だし、専属執事の引き抜きなんか関係ない話だが。まぁ、なんかあったらうちの弟子を頼むわ。」
返事も聞かずに「じゃあね、番犬くん。」と言い残し、スタスタと屋敷を出て行く彼。
手を振ったミカゲの背中を見送りながら、ダンレッドは真剣な表情で眉を寄せていたのだった。



