お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》


手塩にかけて育てた自慢の弟子が、執事補佐として選ばれたことを喜ぶと思っていたダンレッド。

しかし、それを聞いたミカゲの表情は固い。


「ふぅん…。ルーゼント家ねぇ。そういや、この時期だったか、例のパーティー。」

「嬉しくないんですか?執事補佐は、全国で両手で数えるほどしか選ばれないんでしょう?」


すると、ミカゲは足を組んで低く答える。


「いや、師匠として鼻が高いが。あの家はいい噂を聞かないからな。」


予想もしていなかったセリフに目を見開く。

そんなダンレッドに口角を上げたミカゲは、静かに続けた。


「長年執事としてやってると、まぁ裏の仕事も多々あるんだよ。ツテが増えて表沙汰にならない情報を小耳に挟むこともある。…ルーゼント家は、いわゆる裏取り引きが盛んでな。大金積まれて専属デザイナーになるよう持ちかけられたロヴァは縁を切ったって話だ。」


ロヴァは、有名なドレスブランド、ミ・ロヴァの創設者だ。セレブ御用達のブランドは国内外で評価が高く、ルシアのドレスを注文することも多い。

一度だけメルの紹介で顔を合わせたことがあるが、ロヴァは気さくでダンディな色男、といった印象だった。もう五十代近いらしいが、バリバリの現役デザイナーとして働く彼は、誰に対しても親切で寛容だと思っていた。

ルーゼント家は、一見権力のある憧れの存在だが、ミカゲレベルの上級執事の間では目をつけられているらしい。