お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》


「違うの、メル…!私が、ダンレッドについて来てって頼んだの…っ!」 


慌てて二人の間に割って入ったルシア。

一瞬目を丸くした後、小さく息を吐いたメルは怪訝そうに眉を寄せて尋ねた。


「お嬢様が?何か、私に御用があったのですか?」

「え、ええっと、そうじゃなくて。メルのプライベートが気になったというか…」


彼女の言葉に、きょとん、と目を丸くするメル。

と、次の瞬間。

ルシアは意を決したように、ずいっ!と身を乗り出した。


「私、応援するわ!例え、メルが人妻好きでも!!」

(ダン。お前が変なことを吹き込んだんだろう。)


そんな鋭いメルの視線が、笑いを堪えきれず吹き出したダンレッドを突き刺した。

そんな従者達の無言の会話をよそに、ルシアだけは真剣な瞳でメルを見上げている。


「お嬢様。盛大な勘違いをされているようですが…、私は人様の女性に興味をもつような男ではありません。」