お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》



並んで歩く師弟の後ろを、こそこそと尾ける二人組。メル達は尾行の存在に気付かないのか、振り向くことなくスタスタと歩いている。手を引くその姿は、まるで親子のようだ。

すると、やがてメルとアレンは目的地に辿り着き、門の中へと入っていった。素早く後を追ったダンレッドは、その屋敷を見て、ぽつりと呟く。


「すごいお屋敷だね。お嬢さんの家くらいあるんじゃない?」

「そうね。この家紋…、確かハンスロット家のものだわ。メルは顔が広いのね…。」


門に刻まれた印をみて、感嘆の声を上げるルシア。上流階級の貴族にはあまり詳しくないダンレッドは、ふぅん、と軽く相槌を打つ。

さすがに、門の中には入れない。

そこで二人は、姿勢を低くしてハンスロット家の周りを取り囲む柵にゆっくり手をかけた。周囲を気にしながら、そろり、と中の様子を覗き込むその姿は、側から見れば不審者そのものである。


「見て、ダンレッド!メルが綺麗なお姉さまと話してるわ!」


柵の隙間から覗き見していたルシアの声に驚愕したダンレッド。彼女につられてメルを探すと、確かに年上のマダムと談笑している相棒の姿が目に映る。

どういうことだ?まさか、本当に恋人が?

動揺した様子のルシアも、そわそわと言葉を続けた。


「メルって、年上が好みだったのかしら。」

「さぁ…?でも、あのマダム、身なりからしてここの奥様だよ。」


顎に手を当てたダンレッドは、探偵のように眉間にシワを寄せて推理する。


「もしかして、略奪愛…?まぁ、メルなら人妻の一人や二人落とせそうだけど…」


雲行きが怪しい。

飛躍する二人の会話は、ツッコミが不在である。


「メルもニコニコしてるし楽しそうね…」

「いや、でもあれは他所行きのスマイルだよ。執事スイッチがオンになってる。」

「そうなの…??」