お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》

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「見て、ダンレッド。この眼鏡どうかしら?」

「いいよ、最高。絶対お嬢さんだってバレない。」


数十分後。

電車に揺られた二人は、のどかな風景が広がる郊外に来ていた。メルの家は、もうすぐそこである。

帽子とダテ眼鏡を装備し、路地から周囲を伺うダンレッド。スカーフで顔を隠すルシアは、不安げに彼を見上げた。


「わざわざお休みの日に隠れて様子を見に来たって知ったら、メル、怒るかしら…」

「へーきへーき!バレなきゃセーフだよ〜!」


能天気な用心棒は、楽しそうに悪い笑みを浮かべている。自ら言い出したことだが若干の罪悪感を覚えるルシア。しかし、もう後には引けない。

と、その時。

メルの自宅を目の前に、ダンレッドが薔薇色の瞳を見開いた。


「まずい!お嬢さん隠れて!」


ばさり、と電柱の陰に身を潜めた二人。

すると数秒後。家の玄関から出てきたのは、他所行きのフォーマルジャケットを羽織ったメルだった。

彼を見た瞬間、いつもの燕尾服ではない格好に目を輝かせるルシアとダンレッド。しかし、それよりも二人の視線が釘付けになったのは、メルと手を繋ぐ小さな少年である。


「ダンレッド。あの子が、噂の男の子?」

「うん。アレン、って言うんだ。…あんなカッチリした服装でどこ行くんだろ?」