お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》


ダンレッドは、あぁ、と全てを察した。

ルシアは、メルが同居を始めたアレンのために様々な生活用品を揃えているところを見て勘違いをしたらしい。

私生活が謎に包まれている一流執事のプライベートが気になる気持ちはよく分かる。ダンレッドも、以前デートだと騙された時、メルの彼女を見ようと出歯亀した過去があるからだ。

普段は人間らしいところを見せない完璧超人なだけに、恋愛なんてワードがちらついた時には食い付いて当然である。

彼女のトーンが、少しやきもちめいていたように感じたダンレッドは、微笑ましい気持ちでくすりと笑った。


「大丈夫だよ、お嬢さん。メルは今、俺の知り合いの男の子を預かってくれてるの。」

「男の子…?」

「そう。もちろん結婚なんてしてないよ。メルはカッコいいからモテるけど、仕事にストイックすぎて恋愛は眼中にないみたいだし。」

「で、でも!私がお茶会に招かれてメルが髪の毛をセットしてくれた時、家でヘアメイクを練習したって言ってたわ。詳しく聞いても教えてくれなかったし…。それって、髪の長い女性と一緒に暮らしてるってことじゃないの?」


照れたように、それでいてまだ信じられない、といったテンションでおずおずと言葉を続けたルシア。

すると次の瞬間。ダンレッドは、ぷはっ!と吹き出した。ケタケタと笑う彼に、ルシアは戸惑いを隠せない。


「ごめん、それ、俺。」

「えっ!?」

「メルに、家に呼ばれてついてったら、いきなりロヴァさんのアトリエから借りてきた女物のウィッグを被せられてさ。夜な夜な練習に付き合ってたの。」