お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》


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そして、月日は流れ、メルとアレンの同居が始まってから半年後。

とある日の昼下がり。

ダンレッドがルシアから呼び出しを受けたのは、ちょうど昼食を終えた頃だった。


「ダンレッド。ちょっといいかしら。」


周囲を気にするように、こそこそと手招きをするルシア。

ダンレッドは、普段は滅多にこういうことをしない彼女の仕草にワクワクすると同時に持ち前の好奇心が疼き、にこにこと笑いながら近づく。


「どうしたのお嬢さん?メルは、今日は私用でお休みだよ。」

「違うの。メルを探してたんじゃなくて、ダンレッドに聞きたいことがあって。メルには内緒で。」

「おぉ。ドキドキしちゃう。なになに?」


ニヤリ、と不敵な笑みを浮かべたダンレッド。

そんな彼をよそにルシアは至って真剣であり、周囲をきょろきょろと見回して、物陰に隠れるようにダンレッドの背中を押した。

そして、誰もいないと悟るや否や、彼女は意を決したように小さく尋ねる。


「その…、最近気になってたことがあって。プライベートなことだから、聞いたらまずいのかもしれないけど…」

「うんうん。大丈夫だよ。なあに?」

「えっと…、メルって結婚してるの?」

「へっ?」


一瞬、時が止まる。

お互い眉を寄せて見つめあった。

予想外の問いに、余裕のあったダンレッドでさえ表情を崩す。


「ええっと…。お嬢さん、それどういうこと?」

「この前、メルと一緒に買い物に行ったんだけど、雑貨屋さんに寄った時に、メルがスプーンもフォークもセットで買ってて。おまけに、お揃いのマグカップもカゴに入れていたの。私はてっきり、奥さんのために買ったんだと思ってたんだけど…」