お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》



持っていた買い出しの品を置き、少女をそっと抱きしめてふわりと地上に下ろしたアレン。

思ったよりもずっと軽く花のような香りがする彼女に、思わずアレンの胸が騒いだ。


「えへへ、ありがとう。驚かせてごめんなさい。」

「別にいいけど…。どうして木の上なんかにいたんだ?」

「隠れてたの!今、妹とかくれんぼしてて。」


どうやら、彼女はかくれんぼの途中で通りかかったアレンを見てイタズラ心がうずき、罠を仕掛けたらしい。

はぁ、とため息をついたアレンは、改めて彼女を見つめた。

質の良いワンピースに、高そうな靴。

お嬢様らしからぬおてんばな性格なようだが、彼女の服装はれっきとした貴族のものだった。


「あんた、ここの屋敷のお嬢様?」

「うん!ニナっていうの。おにいさんは?」

「…俺はアレンだよ。」

「ふぅん、アレンかぁ…!カッコいいねえ。」


純粋な彼女の瞳に、タジタジなアレン。

予想外のことばかり言ってくるニナは、アレンが今まで出会ったことのないタイプだった。

埃くさい廃街で育ったアレンは、花の香りなんか知らなかった。ましてや、女の子がこんなにも華奢で柔らかいだなんてことも知らない。

と、可愛らしい少女に思わず見惚れていたその時。アレンの顔を見たニナが、はっ!と目を見開く。


「アレン、ケガしてる…!」

「え…?」