お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》



上流階級の人間とは全く関わりを持ったことがないアレンにとって、金持ちは未知の存在だった。

住む世界が違う貴族とはこれからも近づくことはないだろう。アレンはそんなことを考えながら冷めた視線で屋敷を見上げていた。

そう。

彼女と出会う、数十秒前までは。


ガサガサガサッ!!


突然、屋敷の側の木が音を立てた。

アレンが驚いて顔を上げた瞬間。目の前に現れたのは、枝に足をかけ逆さ吊りになった小さな女の子である。


「ばぁっ!!!」


呼吸が止まるアレン。

ワンピースの裾が、べろんとめくれる少女。

アレンは慌てて素早く彼女の服をたくし上げるが、予想外の展開に硬直して声が出ない。


(なんだ、この訳わからん生き物は…!?)


その時、悪戯が成功した少女はケタケタと楽しそうに笑って口を開く。


「あははっ!びっくりしたっ?」

「当たり前だろ!と、とにかく降りろ。落ちたら危ないし、色々目のやり場に困る。」