お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》


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「よし、これで全部揃った。」


数日後。

アレンは、大きなカゴを抱えて市場へ買い出しに来ていた。同居の条件である家事をこなすのにも慣れ、最近では合鍵をもらい外出する機会も増えてきている。

メルとの同居生活は至極順調だった。

アレンは恩義がある手前、メルに敬語を使って慕っており、保護者としてのメルは、いつもクールな態度を崩さないものの、何気ない日にアレンにお小遣いやキャラメルをあげるくらいは優しかった。

無造作にナイフで刈っていたアレンの髪も、メルが切り揃えたおかげで綺麗に整えられている。初めはメルのことを怖がっていたアレンも、そんな優しさに触れて徐々に心を開いてきていた。


と、その帰り道。視界にあるものが映り、アレンはふと足を止めた。


(ここ、ずいぶん大きな屋敷だな。メルさんも、こういう所で働いてるんだっけ。)


小鳥のさえずりが聞こえるのどかな庭園。手入れの行き届いた花々。優雅なピアノの音色。そして、見上げるほど大きな白い屋敷。

そこは、メルの家から少し離れた場所に建つ地主の家だった。