お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》



ダンレッドは目を見開く。

予想外のセリフに動揺しているようだ。


「メル、いいの…?」

「一人暮らしで、同居人もいない、おまけにお前とは気心知れた仲。条件を考えれば、もう俺のトコしかないだろう?」


視線を落とすメルに、ぴくっ!とはねるアレンの肩。

表情一つ変えないメルは、クールに尋ねる。


「君、アレンって言ったっけ…?もし、君が俺のいない間に家事を手伝ってくれるなら、俺の家に置いてもいい。」

「え…?」

「俺と一緒に来る?」


初対面のメルからの誘いに、躊躇している様子のアレン。

一方、ダンレッドはキラキラとした瞳でメルに続ける。


「大丈夫だよ、アレン!この人、怖そうに見えてすっごく優しくていい人だから!」


その時、アレンの背中を押したのは、メルの一言だった。


「馬小屋と俺の家、どっちで寝たい?」


迷う暇もなくメルのトレンチコートを掴んだアレン。ひしと抱きつく素直な少年に、メルは優しく頭を撫でた。

歩き出す二人の背中を見送りながら、ダンレッドも穏やかに笑う。

そして、とてとて、とメルに続くアレンは、ぎこちなく彼の名を呼んだ。


「あの…、メル、さん…?」

「ん?」

「ありがとうございます…、よろしくお願いします。」


頭を下げた少年に、メルは初めて頬を緩ませた。


「うん。こちらこそよろしく。…ほら、おいで?」


優しく差し出された手を、きゅっ!と握ったアレン。こうして、メルの元に小さな同居人が訪れたのだった。

アレンの存在が、クロノア家の三人の関係を大きく揺るがすことなんて、この時は誰も知らなかったのである。