お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》



「なるほどね。要は、旦那様に内緒で子どもを連れ込もうとしたと…」

「わぁっ!それ以上は言わないで!ごめんなさい!」


しおしおと項垂れるダンレッド。

状況を察し小さく息を吐いたメルは、ちらりと足元に視線を落とす。

アレンは、初めて見るメルに緊張しているようだ。一貫してクールな態度のメルに、興味を持ちながらも警戒しているらしい。

メルは、ダンレッドにしがみつくアレンの腕を見て、はっとした。

ダンレッドから聞くように、革命孤児である少年は身体中傷だらけで、まるで捨てられた子猫のようだった。

信頼できる身寄りもなく、一人で生きている彼に同情心のようなものが芽生える。大人に敵意を示し、怯えたように隠れるアレンには、思わず抱きしめてあげたくなるような脆さがあった。


「ダン。旦那様やお店の主人に相談しようとは思わなかったの?ダンの頼みなら快く聞いてくれるんじゃない?」

「うん。でも、なんだか甘えてるような気がして…。俺が抱えたものだから、他の人に頼るのは申し訳ないし。…まぁ、結局勝手に寝る場所を借りてたから何も言えないんだけど…」


小さく息を吐いたメル。

ちらちらと相棒の顔色を窺っていたダンレッド。

すると数秒後、メルは、さらりと言葉を続けた。


「どうして初めから俺に言わなかったの?俺に頼めばいいのに。」

「へっ?」