お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》


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「ダンレッド君。もしかして、猫とか拾ってきてる?」


数日後。

ダンレッドは、窮地に立たされていた。

新聞を広げてくつろぐ食堂の店主の口から投げかけられた問いに、目が泳ぐ。

アレンの身寄りが見つかるまでの間、保護をするつもりで秘密裏に自宅へ引き入れたダンレッド。しかし、ついに間借りしていた食堂の主人にその存在を勘付かれたらしい。

毛布やらミルクやらを持ち込んでバタバタしているところを見られ、店主は猫だと勘違いをしているようだ。


アレンの引き取り手探しは、思ったよりも難航していた。

どこかの商人の下働きにでも出したら人間の生活はできるのだろうが、そこは一度踏み入れたら逃げ出せない世界だった。幼い子どもに決まった人生のレールを背負わせるのは酷すぎる。

ダンレッドには、ウォーレンに雇われる前の自分とアレンの姿が重なって見えていた。だからこそ、ちゃんと信頼できる誰かに預けたかったのだ。純粋にアレンをあの塵溜めのようなホコリくさい廃街から救ってあげたい。

しかし、“猫”の存在に気付かれた以上、アレンを部屋に置いておくことは出来なかった。


そして考え込んだ結果、ダンレッドはアレンを連れ、クロノア家の屋敷にやって来たのだ。