お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》


ルシアは、つられて頭を下げる。

ダンレッドとは違い、握手はしない。メルはあくまで執事の距離感を保ったまま彼女と接する。そんな彼に、ルシアもやや緊張しているようだ。

するとその時、ウォーレンが静かに言葉を続けた。


「ルシア。今後、メルにはお前の専属執事としてついてもらおうと思っているんだ。」

「えっ…!!」


目を丸くする彼女。

ぱっ!とこちらを見上げた彼女の目は、戸惑いに揺れている。


「メルさんが、私の執事に…?」


先ほどのダンレッドとは百八十度異なる反応だ。

若干傷ついたメルだったが、彼女はマイナスの意味ではないらしい。メルがしょぼん、と落ち込んだことを察したらしいルシアは、慌てて訂正する。


「あっ、違うの!さっきの件を間近で見たから…あんなにすごい人が私の執事でいいのかなって…」

「えぇ。私こそ、お嬢様の専属になれて光栄です。そんなに謙遜する必要はないですよ。…それと、私のことは呼び捨てでかまいません。何でもお申し付けください。」