お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》


すると、廊下の角から現れたのは入浴を終えた様子のダンレッドだった。

肩にかけたタオルで髪を拭く彼は、驚いたように声を上げる。


「あれっ?メルさん、お出かけですか?」

「うん、まぁね。」


見慣れないメルの私服に、はっ!とするダンレッド。その薔薇色の瞳は、好奇心からキラキラと輝いている。


「もしかして、デートですか?!」


もはや訂正が面倒になってきたメルが「そうだよ」と答えるや否や、ダンレッドは狂喜乱舞。

仕事仲間だと認識している歳の近い彼に恋人がいることを素直に喜んだ様子のダンレッド。こんなに容姿が整っているメルを世の女性が放っておくわけがないと思いながらも仕事ばかりしている執事モードしか見ていなかった彼は、垣間見えたメルのプライベートに興味津々である。


「ど、ど、どこの誰ですか?!屋敷に来たことあります??」

「内緒。」

「えぇ〜っ!」


実は違う、だなんてもう言い出せない雰囲気。反応の良いわんこをいっときからかった後、メルはバサリ、とトレンチコートを羽織った。


「俺は当分留守にするから、今夜は旦那様を頼むよ。」

「…はーい…」


トン、とダンレッドの肩を叩いてすれ違うメル。
素直に返事をしたダンレッドは、長いまつ毛をわずかに伏せ、去っていく執事の背中を見送ったのだった。