お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》


心の距離が縮まったから、というよりも、メルにとっては飼い犬を呼ぶようなニュアンスに近かったのだが、ダンレッドがあまりにも嬉しそうなので、メルは複雑な心境でまつ毛を伏せた。


「あれはとっさに呼んだだけだよ、ダンレッド。君と俺は友達ではないからね、ダンレッド。」

「そんな口に覚えさせるように名前を呼ばなくても…!」


ダンレッドはめげないようだが、メルは親友のように愛称で呼び合う関係になるつもりはなかった。あくまで仕事仲間の領域から出ない。それは、仕事に私情を持ち込まないメルの頑固なポリシーでもあった。


「もー、相変わらずクールですね…」

「まぁね。…ほら、旦那様が戻って来た。港に向かうよ。」

「あっ!はい!」


ソファを立った二人は、ウォーレンと共に役場を出た。潮の匂いが香る方へと歩いていくと、郊外に大きな港が見える。