お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》

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「ダンレッド。これでいいかしら?」


「うん!さいこー!めっちゃ可愛いよ!ドレス、よく似合ってる」


ファンファーレが鳴り響く城。
控え室の窓から、華やかなゲストが次々と門をくぐる様子が見える。
正装に身を包んだダンレッドは、ちらり、とルシアの首元へ視線を落とした。


(んー、よし。さすがに、“跡”は残してないよな。…まさか、服に隠れるところに…)


「ダンレッド?どうしたの?私、どこか変?」

「へっ?!い、いや?どっこも変じゃないよ!いつも通り綺麗綺麗!」


誤魔化すような笑みを浮かべたダンレッドに首をかしげるルシアだが、やがて彼女はくすりと笑う。


「ダンレッド、城の騎士団に入ることにしたのね」


その言葉に、ダンレッドは動きを止めた。


「私はとても嬉しいけれど、どういう心境の変化なの?前は怒って飛び出すくらい嫌がっていたのに」


おずおずと問うルシア。
わずかに目を見開くダンレッドは、ぱちり、と瞬きをする。

そして、数秒の沈黙の後。彼は小さく笑って口を開いた。


「いいんだ、これで。変わらず傍にいることが、残った俺の役目だと思うから」

「え…?」

「あははっ!いーのいーの、お嬢さんは気にしない!」


ぱっ!と笑みを浮かべたダンレッドに困惑するルシア。すると、はっ!と何かに気づいた彼が薔薇色の瞳を丸くする。


「あ、そっか。お嬢さんはもう変だよね。これからは姫になるわけだし」


ダンレッドは、苦笑しながら言葉を続ける。


「俺がこうして敬語を使わないのも、えらい人に怒られちゃうのかな?」


不意に、ダンレッドの手が引かれた。
存在を確かめるように撫でたルシアの指は、きゅっとダンレッドの手を握る。


「いいの。ダンレッドはそのままで。あなたはいつまでも、私のことを“お嬢さん”って呼んで」