お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》


スイッチを切り替えて執事を演じるメルを、物言いたげに見つめるダンレッド。
そんな視線をさらり、と躱すメルは、にこりといつもの笑みを浮かべていた。

その時、微笑んだルシアは、ぽつりと呟く。


「メルの体調が優れないようだったら側でお世話をしようと思ってたのに、なんだか残念ね。珍しく私がメルの役に立てるって、ちょっと期待してたのよ」

「そうでしたか。ふふ、お嬢様にそんなことはさせられませんよ」

「いいのよ。だって、こうやって何気ないやり取りが出来るのも、あと一週間でしょう?この家を出る前に、一緒にいられる時間を大切にしたくて」


はっとした。
彼女の言葉を聞いたメルも、微かに目を見開く。

彼女は、にこやかに微笑んだままだった。
その声は、平然としすぎていて、未練も感じさせない。

メルの穏やかな声が聞こえる。


「大丈夫です。何も変わることなんてありませんよ。この先も、私はお嬢様にお仕えするんですから」