お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》

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「…頭、痛い…」

「大丈夫?メル。すっごいグロッキーだけど…」

「あぁ。もう吐くモノもないから…」

「綺麗な顔して何言ってんの…!」


翌日。

いつもの燕尾服に袖を通したメルは、つぅ…、と額に手を当てて小さく呼吸をしていた。
それが、屋敷の使用人には繊細で物憂げな姿に映っているようだが、昨夜の惨事を知っているダンレッドにとっては複雑な心境だ。

その時、ぱたぱたと駆けてくるシルエット。
シンプルなワンピースを着たルシアが、二人の目の前で立ち止まる。


「おはよう、二人とも…!」

「おはようございます。お嬢様」

「おはよっ!お嬢さん」


揃えて返事をするメルとダンレッド。
彼女は、大事そうに抱えていたトレンチコートをメルに差し出す。


「メル、これ…。昨日はありがとう」

「いえ。持ってきてくださったのですね」

「えぇ、すぐに返そうと思って。体調は大丈夫?今日は無理して私に付いていなくてもいいわよ…?」

「ふふ、ありがとうございます。心配はいりません。二日酔いはしないタチなので」


(嘘つけ…!俺に夜通し介抱させた上に、さっきまで死にかけてただろ…!)