お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》

ーーー
ーー



真夜中の屋敷。
夜闇に隠れるように裏道を通って門を開ける。
真っ暗な屋敷はみな寝静まっているようで、辺りに人の気配はなかった。

ダンレッドの背から降りたメルだったが、ふわふわして足元がおぼつかないため、ダンレッドの肩を借りるようにして客室を目指す。

やがて、本館の近くまで辿り着き、扉の前で立ち止まる二人。


「メル、頑張って歩いて。もう少しだから…」

「ん。………わっ」

「あっ!ちょっと!下、階段だから!ちゃんと見て!」


石造りの階段に、思わず足を取られるメル。
がくん!と崩れた姿勢をダンレッドがとっさに支えた、その時だった。


「ダンレッド…?」


背後から、聞き慣れた声が聞こえた。
嫌な予感とともに振り向くダンレッド。

すると、そこに立っていたのは、目を見開きこちらを見つめるナイトウェア姿のルシアだった。
別館に自室があるはずの彼女と鉢合わせたことに動揺が止まらない。

驚きのあまり息が止まるダンレッドは、つい、声を上げる。


「お、お嬢さん…っ?!どうしてここに…!!もう日付が変わる時間だよ?!」

「ちょっと眠れなくて、お水でも飲もうかと思ったから…」


眠りにつけないのは、どこかの専属執事と同じ理由だろうか、なんてダンレッドがふと思ったその時。隣に立つシルエットを見たルシアの顔つきが一変する。


「め、メル…?!どうしたの?何かあったの?」

(ま、まずい…!!!)