お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》


相棒の綺麗な顔に傷が付いている。

ダンレッドはわずかに切れていたメルの唇に罪悪感がこみ上げたが、メルは数刻前と同様、ダンレッドを責めようとはしなかった。


「メル。なんでこんなに飲んじゃったの?いつもは、ちゃんとセーブするでしょう?」


黙り込むメル。
すると、数秒後。彼の返事を待つダンレッドの耳に、かすかに声が届く。


「…から…」

「え?」

「…眠れないから…」


ぽつりと呟かれたその言葉は、初めて彼が零した本音だった。


「ベッドで横になっても、目を閉じると、余計なことばかり考える。…彼女の顔が浮かんで消えない…」


ダンレッドは、胸が締め付けられる思いだった。

数時間前の喧嘩も、本当は言うべきじゃなかった。

今、誰よりも苦しんでいるのはメルなのに。
それを一番分かっているのに、正論ばかりを浴びせてしまった。それはまるで、針の雨。
傷つけるだけの理想が、足掻くことさえ許されないメルを追い込んだのだ。