お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》

ーーー
ーー



午後七時。

いつものトレンチコートを羽織り、薄暗くなった街を歩くメル。

ウェディングドレスを選び終えたルシアとは仕立て屋で別れた。装飾品やベールなど、さまざまな小物の準備のせいで定時過ぎまで延びたことを気遣い、メルを見送ったルシア。

送ろうとしても断られ、ついに、メルは彼女に従ったのだ。

ちょうど、今日はロヴァと会う約束があった。それは、城の舞踏会で交わされた飲みの誘い。しかし、旧友と会うはずのメルの足取りは重かった。


その時。ふと、道の脇のブロック塀に寄りかかる影が見えた。

思わず足を止めると、ふいっ、と顔を上げた彼の薔薇色の瞳と目が合う。


「ダン…?」


顔を合わせるのは久しぶりだった。

彼は、数日の謹慎処分を言い渡され間借りしている食堂にこもった後、最近は地域の警備隊へ補助として出向いていた。

屋敷でリューデ王子と鉢合わせないよう、ウォーレンが配慮したのだろう。