「では、私はそろそろ国に戻るよ。これからは文通でもいいか?婚礼に必要な手続きがあれば使者を飛ばそう。」
「はい。構いません。」
「そうか。次に会うのはロージアンの城だな。君を迎え入れる準備を整えておくよ。」
この国にいる滞在する最後の日。リューデはそう言い残して屋敷を出た。
時刻は午後一時。
まだ日が高い。
「メル。」
「はい。」
玄関先で交わされる言葉。
二人は、まっすぐ前を見たままだった。
「ウェディングドレス、選んでくれる…?今日、街の仕立て屋さんにいくつか用意をしてもらっているの。」
「…かしこまりました。」
ルシアの顔は、見れなかった。
どこで間違ったのだろう。
あの舞踏会も、王子に見染められるために踊ったわけじゃない。
美しい彼女が引き立つように、彼女が楽しそうに笑ってくれるように、それだけだった。
あいつのためにローズピンクのドレスで着飾って、髪を整えたわけじゃない。
控室を出ていく彼女から視線を逸らしたあの時。本当は、誰よりも可愛らしく愛おしい彼女を誰にも見せたくなかったんだ。



