お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》


ウォーレンは、「娘を貿易のために売るようなことはしない」と言い切っていた。しかし、そんな彼を説得したのもルシアだった。

王子からの求婚を断れば、さすがに家の立場が悪くなる。隣国との貿易は、クロノア家の収入の五割を占めていた。王族から何かしらの圧力をかけられては太刀打ちできない。

そして、婚約破棄の噂はすぐに国内外に広まるだろう。事業の風向きが悪くなれば、クロノア家の使用人の生活も保証出来ない。

しかし、側室とはいえ王族に嫁げば将来は安泰。生活だって裕福になるだろうし、仕事も舞い込んでくる。普通なら、王族に嫁げただけで玉の輿だと喜ぶものなのだろう。

それを全て知って、ルシアは何も言わなかった。


そして、三ヶ月認めなかったウォーレンも、ついに折れた。きっかけは持病の悪化。処方されていた薬が増え、その値段は高額だった。

ルシアの懇願もあり、薬を服用するようになったウォーレンの病状は落ち着いたものの、その瞳からは今までの光が消えていた。メルだけでなくダンレッドでさえ、その消沈ぶりに咎めることができなかった。