それから、リューデは度々クロノア家を訪れるようになった。
従者は外に待機させ、ルシアと二人で話しているようだった。
メルは、ルシアの側につくことを控えるようになった。もちろん、彼女の身の回りの世話やサポートは今まで通り行う。
しかし、リューデが来たときだけは、彼らの会話が耳に入らないように距離を取るようになった。
それは、ルシアへの配慮であるとともに、彼女自身から「他の仕事をしていい」と言われたからでもあった。
たとえ執事であろうと、結婚を誓った男女の会話に首を突っ込むなんて野暮だ。
そう言い聞かせたが、実際は彼女が傷ついていないかひどく気がかりだった。相手は、側室になれ、なんて目の前で言う男だ。本当は、近づかせたくもなかった。
だが、リューデを追い出すことも出来ない。
先のことを考えようとするたびに、思考が働かない。自分のこと、ルシアのこと、未来を描こうとするたびに、頭の中が真っ黒い絵の具でぐちゃぐちゃになった。



