お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》


その時、部屋の扉が開いた。

メイド達から連絡を受け、急いで帰宅したらしいウォーレン。その顔を見た瞬間、その場にいた全員の動きが止まる。


「騒がしいな…!一体どうしたんだ…?!」


ウォーレンの言葉に我に返ったダンレッドは、メルの腕を払いのけた。


「死んでもお前の盾なんか御免だ。」


吐き捨てるように冷たく言い残し、部屋を出ていくダンレッド。

すれ違ったウォーレンも、話がまるで見えずに戸惑っているようだ。


リューデが静かに立ち上がった。

外套を羽織り、身なりを整えた王子は、コツコツとウォーレンに歩み寄る。


「留守の間にお邪魔して申し訳ない。ウォーレン殿。」

「これはこれは…話は聞いていたが、本当に隣国のリューデ王子がいらっしゃっていたとは…」

「いえ、お構いなく。話は済みましたし、今日はこれで失礼します。お宅の大切な用心棒の機嫌を損ねてしまったようですので。」


部屋の中のルシアへ頭を下げ、屋敷を出ていくリューデ。

こちらには一瞥もくれなかった。

ルシアは、黙って窓の外に見える王子の背中を見つめていた。彼女は、メルの視線にも気付かない。