お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》


それは、ダンレッドが口にするとは思えない言葉だった。

彼は無条件に人が好きだし、誰にでも分け隔てなく接してきた。それこそ、ダンレッドは善意の塊で、他人の良いところしか見ないお人好しだ。

それが、こんな敵意に満ちたような尖ったセリフを言うなんて。


「急にどうしたの?お前らしくない。王族が嫌いなのか?」

「そうじゃなくて、なんというか……、勘。」


メルは、怪訝そうに眉を寄せた。


(勘、って。…野生動物か、お前は。)


そんなことも思ったが、ダンレッドは至って真剣だった。


「この前の舞踏会で、あの王子、メルとお嬢さんを見て何か話してた。」

「へぇ、そうだったのか。全く気が付かなかった。目に留まったのならいい話だろう?」

「違うんだよ!なんか、こう、見んなーっ!って目を塞ぎたくなるような感じ…!」

「ダンが本当にやらなくてよかったよ。」


メルは、否定も肯定もせず小さく息を吐く。


「とにかく、今は旦那様がいないとはいえ追い出すわけにはいかない。なんたって、相手は王子なんだから。こちらの条件をのんで護衛まで置いていったわけだし。」

「それは、分かるけど…」

「そんなに気になるなら、一緒に応接室に入れるように頼んであげる。…ね?」


やがて、ダンレッドは納得したように頷いた。

しかし、ダンレッドの不吉な勘が的中するのは、それから数分も経たないうちだった。