それは、予想外の提案だった。
彼が持ってきたのは、相当重要な話らしい。護衛を一人も付けずに隣国の親しくもない屋敷に入るなんて、危機意識がないのだろうか?まぁ、こちらには王子を暗殺しようなどという企みは毛頭ないが。
てっきり、日を改めるかと思っていたのに。
「それでよろしいのですか?」
「あぁ。構わないよ。」
話がまとまるや否や、王子は控えていたクロノア家のメイドに声をかける。
「持てなしはいらない。応接室はあるか?」
「はい、奥に…」
窺うように、ちらり、とメルを見るメイド。
メルがしぶしぶ頷くと、メイドはそれに応えるよう小さくお辞儀をして王子を屋敷の中へと案内していく。
一体、何なんだ?
まるで心当たりがない。
確かに、ルシアも今では、社交界で名の知れた令嬢だ。隣国への留学経験があり、ロージアン語も嗜んでいる。人当たりも良く、容姿も整っている彼女が一目置かれているのは当然のことだが、王子なんて身分の男が訪ねてくるとは思わなかった。
「メル」
その時。ダンレッドがメルを呼んだ。
視線を向けると、いつもとは違う真剣な表情。メルは、緊張感の漂う視線に、どきり、とした。
「ダン…?どうした?」
小さく尋ねると、少しの沈黙の後、ダンレッドは王子の護衛の目を逃れるように屋敷の扉を閉め、そっ、と告げた。
「俺、あの王子嫌いだよ。好きじゃない。」
「え?」



