「これはこれは…。呼び鈴の前にお出迎えして頂けるなんて。躾が行き届いた家だな。」
それは、流暢な発音だった。
隣国の王子である彼は、語学力に長けているらしい。この国の言葉が彼の口から飛び出すとは想定していなかったメルは、思わず目を見開く。
彼の言い回しに毒が含まれているように感じたが、メルは流れるように胸に手を当て、来客に頭を下げた。
「お初にお目にかかります。私はこの屋敷の執事、メルと申します。旦那様が不在のため、代わりにご挨拶させていただきます。」
「あぁ、わざわざご丁寧に。君のことは知っている。この前、城の舞踏会に来ていただろう?若くとも優秀な執事だと噂に聞いているよ。」
「身に余るお言葉で恐縮至極に存じます。ところで…、失礼ですが本日はどのような御用件で?」
本題を切り出したメル。
ダンレッドは、メルの背後から黙って様子を窺っている。
すると、リューデは表情一つ変えずにさらりと答えた。
「今日は、クロノア家のご令嬢に話があって来た。都合がつく時間が今しかなくてな。彼女に会わせてくれないか?」



