お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》


「あっ!旦那様!おはようございます!」


やがて、こちらの視線に気付いたダンレッドは、ぶんぶんと手を振って頭を下げている。

気前よく手を振り返しているウォーレンを横目で見つめていると、燕尾服に気付いたダンレッドは、バラバラと担いでいた薪を落とす。


「メルさん!執務室にいたんですねー!!今日もカッコイイです!後でトランプでもしませんかー!!」

「声が大きい…!俺はいいから薪を拾いなさい!」


満面の笑みで黄色い声援を送るダンレッドにぴしゃり、と説教を飛ばしたメル。わんこの耳と尻尾のデフォルメが見えるほどテンションの高い彼に、さほど乗り気ではないメルはクールな視線を送っていた。

あいつが“カッコいい”と連呼するのが嫌味ではないと知ったのは、つい最近だった。流石に、テーブルマナーで食器を下げるたびにキラキラした瞳で見上げられては落ち着かない。

ウォーレンは、微笑ましげにそのやりとりを見つめている。