どうか、イーターのいない普通の町がありますように。


ただひたすら祈り、トンネルを抜けるのを待った。


そう思っているのは私だけではなく、きっと皆も思っているのだろう。


車内は静かになり、皆同じように俯いていた。


そして、ついにその時はやって来た。


車がトンネルを抜けたのだ。


まだ、町に入っただけで、中心部にいるわけじゃない。


それでも、私達が住む町を抜けたことで、安心感に包まれていた。


「やった! 町を抜けてやったぜ! とうとうイーター達から逃げ出してやったんだ!」


「はは、長かった……何日経ったのかわかんないけど、本当に長く感じたよ」


桐山も真倫ちゃんも、喜びを隠しきれないと言った様子で。


当然私も、自然と笑顔になっていた。


「あーもう! もうっ! なんだろうなこの感情! 嬉しくてたまんねぇ! 春瑠さん! もう道の駅でいいからさ、そこで休もうぜ! 車の中でも無限に眠れそうだからさ!」


「はっ! やっぱガキだね。でもまあ、その気持ちはわからなくもないけど」


はしゃぐ桐山を見て、風雪も嬉しそうに笑う。


でも、運転をしている春瑠さんと、助手席に座っている未来さんは喜ぶどころか、唸っているようだった。