その名前を聞いて、棗があからさまに嫌そうな顔をする。


「げっ。なんであいつが教室にいんのよ。あいつがいるだけで、空気が悪くなるわ」


棗の声が聞こえたと同時に、響子の言う“あそこ”に視線を向けてみる。


響子の言う“あそこ”は、廊下側の一番前の席のこと。


そして、棗の言う“あいつ”が、その席に座っている込谷さんだ。


込谷さんは、高校に入学したときから目立っていて、友達を作ろうとはしなかった。


なので、同級生女子は全員、彼女を避けるようになった。


ただ、私だけは違う。


込谷さんのことが、なんとなく気になってるのだ。